ただ成功の見込みのために、私達(人間)のよい面がまったく引き出されず、代わりに、社会的に(人間的にも)いい加減になり、ただ物を購買し所有することにしか価値を見出さない状態になるように望んでいる「サイエンス」とは一体どのようなものでしょうか?
私達が本当に必要としている「経済」は、スピリットや良心、道徳的目的や人生の意義を話し合うことを恐れず、人々の向上心を促すような教育を提供するもので、ただ道徳的にモラルの低い行動を判定するだけのものではありません。……
経済の発展は、広く一般に、宗教や伝統的な知恵が抵抗するよう求めている、人間が持っているパワフルな利己的(わがまま・身勝手な)性質を用いることで、唯一成し遂げられます。現代の経済は、極度の欲や「羨望(うらやましいと思うこと)」によって推進され、その特徴は、拡張する成功の最大の原因であり、また決して偶然ではありません。(意図的に操られたものです)。
欲や羨望などの人間が持つ悪習が、システム的に育まれることでもたらされる避けられない結果は、まさに「インテリジェンスの崩壊」です。欲や羨望に支配された人間は、物事の本質や全体像を見ることができず、成功は、結局的に「失敗」になってしまいます。
(ただ多くの場合、人々はそれに気付いていません。物質的には成功しても、人間として価値ある人生を歩むという点では「失敗」しているのです)。
成功が「失敗」に終わり(物質だけの成功にこだわり、人間的成長には失敗すること)、社会全体がこの悪習(欲や羨望)に感染してしまったら、たしかに驚くべき成果を達成するかもしれませんが、日常生きていく中で一番重要な問題を解決することは、より難しくなるでしょう。
(From the book “Small is Beautiful” by E.F.Schumacher, P 9 & 31)