怒りを抱いていると、一番苦しむのは、誰でもない自分自身です。あなたの中に怒りのエネルギーが育ってくると、やみくもに人を罰したり、何かを破壊したくなります。よって知恵のある人は、自分の中に怒りを感じる時、何も言わず、何もしないように心がけます。そうすることによって、まず自分の心が「平穏」になるからです。一旦落ち着くと、頭がすっきりしてくると、相手が、困惑、憎しみ、そして社会、両親、友人、環境によってもたらされた暴力の犠牲者となっていることが分かってきます。このことがはっきりと理解できると、あなたの怒りは、姿を消していくのです。

あなたの父親が、かよわい、優しい、傷をたくさん抱えた5歳の子供だと想像してみましょう。父親をもっと理解できるようになり、思いやりの心が生まれてきます。息子が、このような理解と思いやりを、父親に対して育むことができれば、苦しみはなくなり、自分の中の父親への感情が、徐々に変化していきます。この瞬間に、本当の「思いやり」の気持ちが生まれます。そしてやっと「許す」ことができるのです。

非難や、ジャッジ(厳しい評価)などを含む荒々しい言葉を吐く人の話を聞いている時、怒りを覚えないようにするには、かなりの「思いやり」の心が必要となってきます。

実際、自分の中に思いやりの気持ちを培わなければ、人の話を長く聞く事はできません。「彼の話を、こうやって聞いている理由はたった一つ。彼の心を空っぽにするチャンスをあげるためです。これは慈善のワークなのです」。思いやりの気持ちを持つことで、あなたを「怒り」の攻撃から守ってくれます、だからこそ「思いやり」は、怒りの解毒剤なのです。思いやりがあるからこそ、人と付き合っていけるのです。それが無ければ、(相手の)怒りの攻撃にやられてしまいます。

 人の話の聞き方、そして思いやりの気持ちをはぐくむ「アート」(テクニック)をマスターすれば、相手の心を開くことができます。あなたの心からの気持ちを、愛情のこもった言葉で伝える方法が分かってくると、相手もあなたのことが理解できるようになってきます。コミュニケーションを新たに築くためには、また「許し」がもたらされるためには(相手がどうしてこんなに怒りをもっているのかを理解し、相手を許すこと。そして攻撃している側も、自分がなぜ怒りをぶつけているのかを理解し、自分を許すこと)、以下のことを実践するよう学ぶ必要があります。思いやりのこもった「話の聞き方」、そして愛情をこめて言葉を伝えることです。 (by Thich Nhat Hanh)

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